ポシェット事例

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判例紹介

【最判平成16年8月25日刑集58巻6号515頁】

・事実の概要・
 被告人は、被害者がベンチの上に置き忘れたポシェットを、被害者がその場から約27m離れた時点で持ち去り、中から現金を抜き取りました。被害者はさらに200mほど離れた2分くらいの所でポシェットを忘れたことに気づき、取りに戻りましたが既にポシェットは無くなっていました。この時、被告人が窃盗罪となるか、占有離脱物横領罪となるかが問題となりました。

・決定要旨・
 被告人が本件ポシェットを領得したのは、被害者がこれを置き忘れてベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点であったことなど本件の事実関係の下では、その時点において、被害者が本件ポシェットのことを一時的に失念したまま現場から立ち去りつつあったことを考慮しても、被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われておらず、被告人の本件領得行為は窃盗罪に当たる。

・コメント・
 本件では被告人の行為は、占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪にあたると判断されました。その理由としては被害者のポシェットに対する占有がいまだ失われていないことをあげています。なお、占有離脱物横領罪は占有が失われた財物に対する罪です。具体的な考慮要素は、ポシェットと被害者の距離、被害者のその後の行動や意識などが考えられます。占有があるかどうかについては様々な判例があるので、それらの考慮要素を参考にする必要があります。

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