他人の財物

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 窃盗罪は「他人の財物」を窃取した場合に成立する犯罪です。原則として誰か他人が所有していることが必要ですので、誰が所有しているとはいえないような大気や川の水などは他人の財物といえず、窃盗罪は成立しません。よく刑法上の論点となるのは、法律上所有することが禁止されている覚せい剤などの禁制品を盗んだ場合に窃盗罪が成立するかどうかということです。皆さんの感覚的には、禁制品を盗まれたとしてもそんな被害者を助ける必要はないし窃盗罪は成立しないのではないかと思われるかもしれません。しかし、判例では一応禁制品であっても法律上の手続をとらないで剥奪されない利益を肯定し得るとして、禁制品も他人の財物に含まれると考えています。なお、上記では他人が所有していることが必要と書いていますが、正確には他人が所有していることは必ずしも必要な要件ではありません。すなわち占有しているものを奪っただけでも窃盗罪が成立し得ます。例えば、盗品を運搬中の者がいたとして、そのものからその盗品を奪った犯人は窃盗罪となります。確かに盗品を運搬中の者は正当な権利者ではありませんが、その占有状態を保護する必要があると考えられているからです。

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