不法領得の意思

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 多くの犯罪は主観的要件として「故意」があれば十分ですが、窃盗罪はその故意に加えて「不法領得の意思」とよばれるものが必要です。その定義は、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用処分する意思」と解されています。このように、不法領得の意思は権利者排除意思と利用処分意思の2つから成り立つ概念です。なぜこの不法領得の意思が必要とされるかといえば、まず権利者排除意思に関しては、使用窃盗との区別のためです。すなわち、例えば友達の机の上から少しの間だけ消しゴムを借りようと思い拝借した場合を考えてみますと、このような場合に窃盗罪だというのは少し納得がいかないと思います。これは権利者である友達を排除しようとしていなくて、あくまでも少しだけ借りようと思っているだけなので使用窃盗とよばれます。使用窃盗は権利者排除意思がなく不可罰なのでご安心ください。
 つぎに利用処分意思ですが、これは毀棄罪との区別のためです。例えば殺害後に犯行の発覚を恐れて破壊する目的で被害者の腕時計を持ち去ったとしても窃盗罪にはならず、実際に壊した場合には器物損壊罪となります。窃盗罪が重い罪とされているのもやはり利欲犯的性格があるからで、このような毀棄目的の場合には窃盗罪とするまでもないと考えられているという背景があります。

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